Japanische Klassiker mit Furigana
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いしがおごる
いしが奢る
山本 周五郎
Lesen Sie いしが奢る (いしがおごる) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 22.304 Zeichen · 45 Bildschirme
保馬は声をださずに笑った。
「城代の令嬢は嫁にゆけない躯なんだろう」
「あら」いしは眼をみはった、「そのことはご存じだったんですか」
保馬は逆に訊き返した。
「いしのいい人というのは誰なんだ」
いしは口ごもった。
保馬はすぐにうち消した。
「いや、いいよ、ちょっと口が辷ったんだ」そして足を早めた、「早くゆこう、夜になってしまう」
掬水亭へ着くと、いしは例のとおりはしゃぎだした。いつかの床の上へ席の支度をさせ、今日はこっそり逢曳に来たのだ、などと云って仲居たちを遠ざけ、二人だけで膳に向った。
「あれからもう二た月になりますわね」
「心中のしそこないか」
「あのときはお客に伴れられて来て、いい気になって飲んだもんですからすっかり酔ってましたの、さもなければ間違える筈はなかったんですけれど」いしはこう云って、床の端のところをなつかしそうに見やった、「――そこの処でしたわねえ、貴方はこんなふうにしゃがんで、なにか考えごとをしていらっしゃいましたわ」
「水を眺めていたんだ、小さな魚がつながって泳いでいたよ」
「こんなふうにしゃがんでいらっしゃいましたわ」といしは続けた、「あたしまったく人違いをして、おどかしてあげるつもりで、そっとうしろから忍んでいったんですの、それが酔っているものだからつい」