Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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いのちのしょや

いのちの初夜

北条 民雄

Lesen Sie いのちの初夜 (いのちのしょや) von 北条 民雄 (ほうじょうたみお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 31.366 Zeichen · 63 Bildschirme

Aozora Bunko

と看護婦の一人が言うと、他の一人はもうトランクを開いて調べ出した。どうとも自由にしてくれ、裸になった尾田は、そう思うよりほかになかった。胸まで来る深い湯の中で彼は眼を閉じ、ひそひそと何か話し合いながらトランクを掻き廻している彼女らの声を聞いているだけだった。絶え間なく病棟から流れて来る雑音が、彼女らの声と入り乱れて、団塊になると、頭の上をくるくる廻った。その時ふと彼は故郷の蜜柑の木を思い出した。笠のように枝を厚ぼったく繁らせたその下でよく昼寝をしたことがあったが、その時の印象が、今こうして眼を閉じて物音を聞いている気持と一脈通ずるものがあるのかもしれなかった。また変な時に思い出したものだと思っていると、

「おあがりになったら、これ、着てください」

と看護婦が言って新しい着物を示した。垣根の外から見た女が着ていたのと同じ棒縞の着物であった。

小学生にでも着せるような袖の軽い着物を、風呂からあがって着け終わった時には、なんという見窄らしくも滑稽な姿になったものかと尾田は幾度も首を曲げて自分を見た。

「それではお荷物消毒室へ送りますから――。お金は拾壱円八十六銭ございました。