Japanische Klassiker mit Furigana
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いやなかんじ
いやな感じ
高見 順
Lesen Sie いやな感じ (いやなかんじ) von 高見 順 (たかみじゅん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 292.113 Zeichen · 587 Bildschirme
「これよ」
と言って、右手の人差指で自分の鼻の頭をはじくようにした。花札のバクチの意味である。
「ハナ……?」
この舟でこれから行った先でハナをやろうというのか。
「あたしは客ひき……」
「ダキか、おめえは」
「あたしは抱かれたい……」
「カモと見られたか。俺は金なんか持ってない」
「カモは向うで、ネギしょって待ってるわ」
「あいにく俺は、ハナっぱしは強くても、ハナのほうは強くない」
「ハナっぱしさえ強ければ……」
「それにしても、話が大分ちがってきたな」
「そうでもないのよ」
舟が大きく揺れて、磯のにおいがしてきた。どうやら東京湾に出たようだ。黒い水面は、油でも流れているのか、青光りしていた。
変なことになって来たぞ。ま、行くとこまで行ってやれ。
その行き先は、隅田川のポンポン蒸気ほどの大きさの舟だった。
「これに移るのかい」
「ええ」
海上ではなく、その舟は石垣の上から常緑樹の枝が深々と垂れさがっているかげに、隠れるようにとまっていた。風がやけに強くなって、寄せてくる波も高く、舟は俺を拒むみたいにゆらいでいた。扉を密閉した船室からかすかながら灯がもれて、人はいるようだが、しんと静まりかえっている。