Japanische Klassiker mit Furigana
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いやなかんじ
いやな感じ
高見 順
Lesen Sie いやな感じ (いやなかんじ) von 高見 順 (たかみじゅん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 292.113 Zeichen · 587 Bildschirme
「綾子はときどき、お邪魔してるんじゃないですか」
「いいや」
「兄貴の話を何かしやしなかったですか」
「いいや」
百成は俺から眼をそらせて、
「今度の事件は海軍の将校がずいぶん動いたらしいですね」
と話題をまた五・一五事件に移したが、ほんとはそんなことより、綾子のことが気がかりなようだった。綾子のこと、そしてまた兄のことを話題にしたい目的でここへ来たようだと俺に思われた。俺もそれに興味はあったが、今は五・一五事件のほうが俺には気がかりなのだった。
百成の兄のことと言えば、俺も根室に来て半年近くなっていたので、あのアビルの「家出」に関する噂をすでに耳にしていた。その噂とは、兄の清一郎が東京へ出奔したのは、この網元の家を弟の真二郎につがせるためだったのだというのである。アビルと名乗った清一郎が俺に言っていたように、彼が一時アナーキストとして暴れたことは事実だが、そのため廃嫡を宣言されたわけではない。まじめな弟に家をつがせるために、長男の権利をみずから投げ捨てたのだという。
清一郎に対してきわめて同情的な噂だった。噂はしかし、それだけにとどまってはいなかった。兄弟の間に、綾子にまつわる何か複雑な事情もあったようだという噂も聞いた。