Japanische Klassiker mit Furigana
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おせん
おせん
邦枝 完二
Lesen Sie おせん von 邦枝 完二 (くにえだかんじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 74.074 Zeichen · 148 Bildschirme
「そんなら千吉さんは、橘屋の徳さんから、その金を借りて。――」
「はい。今頃はおおかた、どこぞお大名屋敷のお厩で、好きな勝負をしてでござんしょうが、文を御覧なすった若旦那が、まッことあたしからのお願いとお思いなされて、大枚のお宝をお貸し下さいましたら、これから先あたしゃ若旦那から、どのような難題をいわれても、返す言葉がござんせぬ。――お師匠さん。何としたらよいものでござんしょう」
まったく途方に暮れたのであろう。春信の顔を見あげたおせんの瞼は、露を含んだ花弁のように潤んで見えた。
「さァてのう」
腕をこまねいて、あごを引いた春信は、暫し己が膝の上を見詰めていたが、やがて徐に首を振った。
「徳さんも、人の心の読めない程馬鹿でもなかろう。どのような文句を書いた文か知らないが、その文一本で、まさか二十五両の大金は出すまいよ」
「それでも兄さんは、ただの二字でも三字でも、あたしの書いた文さえ持って行けば、お金は右から左とのことでござんした」
「そりゃ、いつのことだの」
「ゆうべでござんす」
おせんがもう一度、顔を上げた時であった。突然障子の外から、藤吉の声が低く聞えた。