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Japanische Klassiker mit Furigana

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おせん

おせん

邦枝 完二

Lesen Sie おせん von 邦枝 完二 (くにえだかんじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 74.074 Zeichen · 148 Bildschirme

Aozora Bunko

雪駄の皮を、鍋で煮るんだ。軟らかにして、針の通りがよくなるようによ」

「そうかしら」

「しらも黒もありァしねえ。それが為に、忙しい時にゃ、夜ッぴて鍋をかけッ放しにしとくから、こっちこそいい面の皮なんだ。――この壁ンところ鼻を当てて臭いで見ねえ。火事場で雪駄の焼け残りを踏んだ時と、まるッきり変りがねえじゃねえか」

「あたしゃもう、ここにいてさえ、いやな気持がするんだから、そんなとこへ寄るなんざ、真ッ平よ。――ねえお前さん。後生だから、かけ合って来とくれよ」

「おめえ行って来ねえ」

「女じゃ駄目だというのにさ」

「男が行っちゃァ、穏やかでねえから、おめえ行きねえッてんだ」

「だって、こんなこたァ、どこの家だって、みんな亭主の役じゃないか」

「おいらァいけねえ」

「なんて気の弱い人なんだろう」

「臭えからいやなんだ」

「お前さんより、女だもの。あたしの方が、どんなにいやだか知れやしない。――昔ッから、公事かけ合は、みんな男のつとめなんだよ」

「ふん。昔も今もあるもんじゃねえ。隣近所のこたァ、女房がするに極ッてらァな。行って、こっぴどくやっ付けて来ねえッてことよ」

壁一重隣の左官夫婦が、朝飯の膳をはさんで、聞えよがしのいやがらせも、春重の耳へは、秋の蝿の羽ばたき程にも這入らなかったのであろう。