Japanische Klassiker mit Furigana
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おせん
おせん
邦枝 完二
Lesen Sie おせん von 邦枝 完二 (くにえだかんじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 74.074 Zeichen · 148 Bildschirme
行燈の下の、薬罐の上に負いかぶさったその顔は、益々上気してゆくばかりであった。
三
「重さん。もし、重さんは留守かい。――おやッ、天道様が臍の皺まで御覧なさろうッて真ッ昼間、あかりをつけッ放しにしてるなんざ、ひど過ぎるぜ。――寝ているのかい。起きてるんなら開けてくんねえ」
どこかで一杯引っかけて来た、酔いの廻った舌であろう。声は確に彫師の松五郎であった。
「ふふふふ。とうとう寄りゃがったな」
首をすくめながら、口の中でこう呟いた春重は、それでも爪を煮込んでいる薬罐の傍から顔を放さずに、雨戸の方を偸み見た。陽は高々と昇っているらしく、今さら気付いた雨戸の隙間には、なだらかな日の光が、吹矢で吹き込んだように、こまいの現れた壁の裾へ流れ込んでいた。
「春重さん。重さん。――」
が、それでも春重は返事をしずに、そのまま鎌首を上げて、ひそかに上りはなの方へ這い寄って行った。
「おかしいな。いねえはずァねえんだが。――あかりをつけて寝てるなんざ、どっちにしても不用心だぜ。おいらだよ。松五郎様の御登城だよ」
「もし、親方」
突然、隣の女房おたきの声が聞こえた。
「ねえお上さん。