Japanische Klassiker mit Furigana
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おせん
おせん
邦枝 完二
Lesen Sie おせん von 邦枝 完二 (くにえだかんじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 74.074 Zeichen · 148 Bildschirme
ここの家ァ留守でげすかい。寝てるんだか留守なんだか、ちっともわからねえ」
「いますともさ。だが親方、悪いこたァいわないから、滅多に戸を開けるなァお止しなさいよ。そこを開けた日にゃ、それこそ生皮の匂で、隣近所は大迷惑だわな」
「生皮の匂ってななんだの、お上さん」
「おや、親方にゃこの匂がわからないのかい。このたまらないいやな匂が。……」
「判らねえこたァねえが、こいつァおまえ、膠を煮てる匂だわな」
「冗談じゃない。そんな生やさしいもんじゃありゃァしない。お鍋を火鉢へかけて、雪駄の皮を煮てるんだよ。今もうちで、絵師なんて振れ込みは、大嘘だって話を。……」
がらッと雨戸が開いて、春重の辛い顔がぬッと現れた。
「お早よう」
「お早ようじゃねえや。何んだって松つぁんこんな早くッからやって来たんだ」
「早えことがあるもんか。お天道様は、もうとっくに朝湯を済まして、あんなに高く昇ってるじゃねえか。――いってえ重さん。おめえ、寝てえたんだか起きてたんだか、なぜ返事をしてくれねえんだ」
「返事なんざ、しちゃァいられねえよ。――いいからこっちへ這入ンねえ」
不機嫌な春重の顔は、桐油のように強張っていた。