Japanische Klassiker mit Furigana
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おりつとこらと
お律と子等と
Lesen Sie お律と子等と (おりつとこらと) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 25.195 Zeichen · 51 Bildschirme
それが洋一の足音を聞くと、やはり耳掻きを当てがったまま、始終爛れている眼を擡げた。
「今日は。お父さんはもうお出かけかえ?」
「ええ、今し方。――お母さんにも困りましたね。」
「困ったねえ、私は何も名のつくような病気じゃないと思っていたんだよ。」
洋一は長火鉢の向うに、いやいや落着かない膝を据えた。襖一つ隔てた向うには、大病の母が横になっている。――そう云う意識がいつもよりも、一層この昔風な老人の相手を苛立たしいものにさせるのだった。叔母はしばらく黙っていたが、やがて額で彼を見ながら、
「お絹ちゃんが今来るとさ。」と云った。
「姉さんはまだ病気じゃないの?」
「もう今日は好いんだとさ。何、またいつもの鼻っ風邪だったんだよ。」
浅川の叔母の言葉には、軽い侮蔑を帯びた中に、反って親しそうな調子があった。三人きょうだいがある内でも、お律の腹を痛めないお絹が、一番叔母には気に入りらしい。それには賢造の先妻が、叔母の身内だと云う理由もある。――洋一は誰かに聞かされた、そんな話を思い出しながら、しばらくの間は不承不承に、一昨年ある呉服屋へ縁づいた、病気勝ちな姉の噂をしていた。