Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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おりつとこらと

お律と子等と

芥川 竜之介

Lesen Sie お律と子等と (おりつとこらと) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 25.195 Zeichen · 51 Bildschirme

Aozora Bunko

「慎ちゃんの所はどうおしだえ? お父さんは知らせた方が好いとか云ってお出でだったけれど。」

その噂が一段落着いた時、叔母は耳掻きの手をやめると、思い出したようにこう云った。

「今、電報を打たせました。今日中にゃまさか届くでしょう。」

「そうだねえ。何も京大阪と云うんじゃあるまいし、――」

地理に通じない叔母の返事は、心細いくらい曖昧だった。それが何故か唐突と、洋一の内に潜んでいたある不安を呼び醒ました。兄は帰って来るだろうか?――そう思うと彼は電報に、もっと大仰な文句を書いても、好かったような気がし出した。母は兄に会いたがっている。が、兄は帰って来ない。その内に母は死んでしまう。すると姉や浅川の叔母が、親不孝だと云って兄を責める。――こんな光景も一瞬間、はっきり眼の前に見えるような気がした。

「今日届けば、あしたは帰りますよ。」

洋一はいつか叔母よりも、彼自身に気休めを云い聞かせていた。

そこへちょうど店の神山が、汗ばんだ額を光らせながら、足音を偸むようにはいって来た。なるほどどこかへ行った事は、袖に雨じみの残っている縞絽の羽織にも明らかだった。

「行って参りました。