Japanische Klassiker mit Furigana
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あじさい
たそがれの人間 佐藤春夫怪異小品集
佐藤 春夫
Lesen Sie たそがれの人間 佐藤春夫怪異小品集 (あじさい) von 佐藤 春夫 (さとうはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 41.277 Zeichen · 84 Bildschirme
もっとやさしくいたわるべきであったのにと思っている。
縁談はめでたく運んで、せがれは新婚旅行に、父の故郷の方へ行きたいと云い出した。少し遠いが、近ごろ鉄道が完全に開通して新しい観光地として世の注目を浴びているばかりではなく、その幼時に祖父母をたずねて、わたくしども父母とともに二三度行ったこともあるからであろう。彼はわたくしが命じたわけではなかったのに、祖父母の墓前にも詣でることを予定のなかに入れていたから、わたくしは若い者にも似ぬその心掛をよろこび、そうして
「そのついでに生れてすぐ死んだお前の妹のお墓へもお参りしておやり、幽香嬰女墓という小さなのが墓地の西北の隅の方にあるから、――祖父さんや祖母さんのものと対角線の位置だ」
と云って置いた。幽香嬰女墓はその祖父母が建てて置いてくれたものである。
思うにこの幽霊はあまりの悲しさに意識下に葬って置いた記憶が年月を経てその悲しさのゆるむのを待って意識の蓋を突き上げてその姿を現わしたわが悲しみの映像であったに相違ない。
ここにこういう死児の歳を数える話を記しているわたくしという人物は、当年六十八歳になる老詩人であるが、こんな話はおそらくは老人センチメンタリズムの所産とでも云うものであろう。