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Japanische Klassiker mit Furigana

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あじさい

たそがれの人間 佐藤春夫怪異小品集

佐藤 春夫

Lesen Sie たそがれの人間 佐藤春夫怪異小品集 (あじさい) von 佐藤 春夫 (さとうはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 41.277 Zeichen · 84 Bildschirme

Aozora Bunko

引揚の時毛皮が持ち出せないので家内のも自分のもそっくり、一時預けて置くつもりでその満人に頼むと、こちらは、また機会を見つけて後日持ち出しに来る気でいたのを、先方ではその事を知っていたのか知らないでか、先方からこの一幅を餞別にと云って贈られて、云わばあっさりと毛皮類一式と交換のようなことにされてしまいました。なかなか機敏な手口ですね。ものはいいものでしょうが、何しろ出処が廟かお寺かとあっては満洲では堂々と持っているには都合がよくないところへ、毛皮ほどにはおいそれと現ナマにはなりにくいのですからね」

と云う曰くつきの品は、床の間の倚樹聴流泉という心にくい五文字で、それが雄偉魁麗ともいうべき隷書で彫り込んだように力勁く見事に書かれているのであった。

(F君はもと南満医学堂で眼科の教授をしていた引揚者なのである)

手もち無沙汰にじっとお菓子を見つめていた初雄に、

「さあ、いただきなさい」

というと子供はよろこんでカステラを小さなフォクでいろいろに切り割いて食べてはお茶をすすっている。その間に話題が自然とそこに向いて、さっき待合室で見かけた老夫人に就いてF君の語り出したおおよそ次のような話に自分はしばらく耳を傾けていた――