Japanische Klassiker mit Furigana
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ちいさこべ
ちいさこべ
山本 周五郎
Lesen Sie ちいさこべ von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 33.480 Zeichen · 67 Bildschirme
「あのときって」
「子供たちのことで初めて話したときよ、おれが子供たちは置けねえと云ったとき、おめえはなにか云いかけた、おれのことを睨んでなにか云おうとして、云うのをやめて立っていったことがある、忘れたか」
「おどろいた」とおりつが眼をみはった、「ずいぶんもの覚えがいいのね」
「なにを云おうとしたんだ」
「さあ、なんだったかしら」おりつはかぶりを振った、「覚えていないようよ、でも、どうしてそんなこと気になさるの」
「こう云おうとしたんじゃあないのか」と茂次が云った、「おれがあの子供たちでなくってよかったって、――そうだろう」
「まさか、いくらなんだって」とおりつは眼をそらしながら云った、「あたしそんなことを云えやしませんわ」
「だから云わずに立っていったんだ」
「まさかそんな」とおりつは眩しそうな眼で茂次を見た、「――でもどうして、いまになってそんな古いことを云いだすんですか」
「古かねえさ」と茂次が云った。
古いことではない、いまでもその言葉が耳についている、という顔つきで、茂次は飯をたべ始めた。
それから五六日、おりつは心たのしい時をすごした。茂次に云われて思いだしたのであるが、あのとき彼女はそう云おうとしたのである。