Japanische Klassiker mit Furigana
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ちくしょうだに
ちくしょう谷
山本 周五郎
Lesen Sie ちくしょう谷 (ちくしょうだに) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 69.788 Zeichen · 138 Bildschirme
――よほどの忍耐と、年月をかけるつもりがなければ、決してうまくはゆくまい、と老人は云った。それに対して隼人は、やれる限りやってみる、辛抱することにかけては自信がある、とはっきり答えた。
「おれもここへ根をおろそうか」と或るとき彼は呟いた、「正内老人も根をおろした、老人は眼にこそ見えないが種子を蒔いた、その種子は村のどこかに根をおろしている筈だ、おれがその種子を育ててみようか」
帯刀は僅か六十人たらずの人間のためにと云った。だが人間は、たった一人のために生涯を賭けることさえある。流人村の住民は古い藩法の置き土産だ。ここを「ちくしょう谷」と呼ばせるようにしたのは、藩の仕置の怠慢によるもので、住民たちの責任ではない。とすれば、怠慢だった仕置の責任をとり、かれらを人間らしい生活に立ち直らせるのは、藩に仕える者の当然な役目だ。
「思いきってそうしようか」とそのとき彼は自分に云った、「――あのあやを嫁に貰って、村へ住居を造って」
あやという名が口に出たとたん、隼人はつよく眉をしかめた。殆んど無意識に口から出たのであるが、いつか雑木林の中で見せられた彼女の肢躰と、それに重なるように、あによめきいの姿が思いうかんだのである。