Japanische Klassiker mit Furigana
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ちくしょうだに
ちくしょう谷
山本 周五郎
Lesen Sie ちくしょう谷 (ちくしょうだに) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 69.788 Zeichen · 138 Bildschirme
こうして、隼人の国許での生活が始まった。
朝四時に起床、六時に藩校の道場へ出る。稽古は午前ちゅうで終るが、特に希望する者たちを午後三時まで教え、午後五時に退出する。道場は大手門の外にあり、北屋敷にある朝田家とは約十町しかはなれていないので、往復にひまをとられることはなく、帰るとすぐ、夕食まで甥の小一郎に素読を教えた。小一郎は五歳になる。躯つきは小さいが、利巧で、たいへんな暴れん坊だった。その点は父の織部よりも、隼人の幼時に似ているらしい、知人からよく昔の隼人にそっくりだと云われた。
十月になってから、隼人は梅原家へ訪ねてゆき、内談のあった婚約を解消してもらった。梅原頼母は五百三十石の寄合役肝入で、小池帯刀の上役に当るが、隼人の口上にはいちおう反対し、こちらは待ってもよいと云った。隼人は小一郎が十五歳になるまで結婚はしないつもりであるし、十年も待ってもらうのは自分として耐えられないからと云い、梅原でもようやく承知した。――そのすぐあとのことである。稽古が終って道場から帰る途中、斎藤又兵衛に呼びとめられた。それまでつきあいもなく、もちろん口をきいたこともなかったが、顔だけは知っていたので、又兵衛だということはすぐにわかった。