Japanische Klassiker mit Furigana
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きつねつき
ちくま日本文学012 中島敦
Lesen Sie ちくま日本文学012 中島敦 (きつねつき) von Nakajima Atsushi (中島 敦) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 9.136 Zeichen · 19 Bildschirme
人々は、なるほどそうだと思った。実際、シャクは何もしなかったから。冬籠りに必要な品々を頒け合う時になって、人々は特に、はっきりと、それを感じた。最も熱心なシャクの聞き手までが。それでも、人々はシャクの話の面白さに惹かれていたので、働かないシャクにも不承無承冬の食物を頒け与えた。
厚い毛皮の陰に北風を避け、獣糞や枯木を燃した石の炉の傍で馬乳酒を啜りながら、彼等は冬を越す。岸の蘆が芽ぐみ始めると、彼等は再び外へ出て働き出した。
シャクも野に出たが、何か眼の光も鈍く、呆けたように見える。人々は、彼がもはや物語をしなくなったのに気が付いた。強いて話を求めても、以前したことのある話の蒸し返ししか出来ない。いや、それさえ満足には話せない。言葉つきもすっかり生彩を失ってしまった。人々は言った。シャクの憑きものが落ちたと。多くの物語をシャクに語らせた憑きものが、もはや、明らかに落ちたのである。
憑きものは落ちたが、以前の勤勉の習慣は戻って来なかった。働きもせず、さりとて、物語をするでもなく、シャクは毎日ぼんやり湖を眺めて暮らした。その様子を見る度に、以前の物語の聴手達は、この莫迦面の怠け者に、貴い自分達の冬籠りの食物を頒けてやったことを腹立たしく思出した。