Japanische Klassiker mit Furigana
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ばちあたり
ばちあたり
山本 周五郎
Lesen Sie ばちあたり von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 22.391 Zeichen · 44 Bildschirme
発車を告げるベルが鳴りだし、歩廊を走る足音やひと声が、他の始発駅とは違うこの駅特有の騒がしさで聞えた。
「三人の親なら親らしくもっとしっかりしなさい」と姉はタバコに火をつけながら云った、「このあいだ高ちゃんが来てこぼしてたわよ、また遊びだしたんだって、ちょっと景気がいいと思えばすぐにそれなんだから、あんたの悪い癖よ」
「冗談でしょ、嘘ですよそんなこと、あいつはすぐにそんなふうな勘ぐりをするんだ、このまえのときだって、あの女とはなんでもありゃあしないのに、高子のやつが独りでばかな想像をして」
「なんでもない女にどうして二十万もやったの」と姉が云った、「つまらない云い訳はよしなさい、あんたときたら女にはまったく――」
列車が動きだし、私は窓外へ眼を向けた。この沿線では始めの二時間の風景がたまらなく退屈である、田と畑と林、僅かな丘の起伏しかないところへ、工場と安普請の住宅、――古いのも新らしいのも玩具のように小さくて、広い田や畑のあいだにそこだけぎっちりと寄り集まり、きまったように洗濯物を掛けつらねている、その洗濯物の大部分が赤児の肌着やおしめであるのを見るたびに、人間の無知や貧困さが露骨に感じられて、云いようもなく重い、かなしい気分を唆られるのである。