Japanische Klassiker mit Furigana
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ひとごろし
ひとごろし
山本 周五郎
Lesen Sie ひとごろし von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 22.607 Zeichen · 45 Bildschirme
昂軒はじっと六兵衛の顔を見まもった。なにが彼のやりかたか、ということをみきわめようとしているらしい。六兵衛は歯をみせて笑った。それは、人がいきなり恐怖におそわれた場合、叫びだすまえに笑うような、笑いではない笑いかたであった。現に、彼は笑うどころではなく、全身でふるえ、額や腋の下にひや汗をかいていた。
「必ず役目をはたすって、おかしなやつだ」と昂軒は云った、「いいだろう、おれは断じて逃げも隠れもしない、ゆだんをみすまして寝首をかくつもりかもしれないが、そんなことでこのおれを討てると思ったら、大間違いだぞ」
「さあ、どうかな」と云って六兵衛はまた歯をみせた、「それはわからないぞ、仁藤昂軒、それだけはわからないぞ」
昂軒は眉をしかめ、片手を振って茶店のほうへ戻った。双子六兵衛はあとからついてゆき、十間ほど手前で立停り、昂軒のようすを見まもった。昂軒はどなっていた、茶を持ってこいというのである。けれども、さっきの腰の曲った老婆と、その娘らしい四十がらみの女房とは、茶店の裏から逃げだしていった。昂軒がいくらどなっても、彼女たちが戻ってくる公算はない、つづめていえば、仁藤昂軒は一杯の渋茶も啜れないのである。