Japanische Klassiker mit Furigana
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ひとごろし
ひとごろし
山本 周五郎
Lesen Sie ひとごろし von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 22.607 Zeichen · 45 Bildschirme
五
宿へ着けば「ひとごろし」という叫び声で、客は出ていってしまうし、宿の者も逃げだしてしまう。
富山松平藩から通報でもあったらしく、到るところに番士が見張っているし、街道の掛け茶屋さえ例外ではなく、空腹に耐えかねて店の品を摘み食いすれば、代価を置いてゆくのに「泥棒」とか「食い逃げ」などと喚きたてられた。しかも、初めは討手が一人だったのに、いまは娘が加わって二人になった。
片方がのびのび寝ているとき、片方が起きていて、「ひとごろし」と叫び続ける。その声を聞くと、そこまで食膳を運んで来た宿の女中が、その食膳を持ったまま逃げてしまうのであった。
越中富山から雄山峠を越えて、道は信濃へはいる。中には天竜川をくだって、東海道の見付へゆく者もあるが、たいていは中仙道を選ぶのが常識だったらしい。仁藤昂軒は後者の道を選んだのであるが、諏訪湖へかかるまえに骨の髄からうんざりし、飽きはててしまった。――名の知れない高山が遠く左にも右にも見え、まわりはいちめんの稲田であった。
その道傍のひとところに、松林で囲まれた三尺ばかり高い台地がある、昂軒はそこへあがってゆき、大きな編笠をぬぎ旅嚢を投げやって、大きな太息をついた。