Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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へちまのき

へちまの木

山本 周五郎

Lesen Sie へちまの木 (へちまのき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 29.120 Zeichen · 58 Bildschirme

Aozora Bunko

「げにもっとも」と云って房二郎は、からになった燗徳利を取って振った、「おやじ、酒だ」

「だめです」ととんびのあるじはかたくなに云い返した、「うちは酒をあじわってもらう店で、酔っぱらうために飲ませるんじゃあねえんだから」

つけ板のまわりにはほかに二人、お店者らしい中年の男が、この店のかみさんの酌でひっそりと飲んでいた。房二郎はあいそのない亭主の言葉にむっとした。仮にもしょうばいをしているのに、そんな客を突きとばすような挨拶はないだろう、と思ったのであるが、他の二人の客のことを考えて、尋常に頭をさげた。

「これもげにもっとも」と房二郎は云った、「勘定をしてもらおうか」

房二郎はどきっとし、坊主枕から頭をもたげた。暗くしてある行燈の仄かな光で、自分の横に女が寝てい、裸の足と手が、自分の躯に絡みついているのに気づいた。

「おい、起きてくれ」と彼は女の肩をゆり動かした、「ここはどこだ、おまえは誰だ」

女は房二郎にしがみつき、その胸に顔をすり寄せながら、黙って眠って、と囁いた。そのまま眠ってちょうだい、あたしすぐに向うへゆくから、と付け加えた。彼はまたそのまま眠ってしまった。