Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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へちまのき

へちまの木

山本 周五郎

Lesen Sie へちまの木 (へちまのき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 29.120 Zeichen · 58 Bildschirme

Aozora Bunko

房二郎は自分の机の前に坐ってから、財布を出して中をしらべてみた。家を出がけにおるいが、少し入れておいた、と云って渡してくれたものだ。いましがた段平に少しばかり割前を払ったとき、かなり多額にはいっているようなので、財布をあらためると、一分銀が三枚、二朱が二つと、銭が三十文あった。

――段平に遣ったのが二朱だった、とすればほぼ一両か。

財布をしまいながら、房二郎は顔を歪めた。部屋の借り賃も溜ってるし、こんな金を貰う義理はまったくない。すぐに返さなければならないが、手を付けてしまったのだから、このままでは返せないし、当分は返すあてもない。房二郎はすっかり気が重くなった。

――それにゆうべの女だ、いつかの晩と同じ女だと思うが、いったいあれはどこの家のどんな女だろう。

よほど段平にきこうかと思ったが、どうにも口には出せなかった。桜田小路の家を出れば、そのまま生きた生活にはいれると思った。しかしこれまでのところ、世間は彼を拒絶し、押し戻すようにしか思えない。すべてがちぐはぐで、不合理で、いやらしく不潔な面だけしか彼にみせてはくれなかった。三男坊だから窮屈で不自由な生活だと思ったが、千二百石の旗本に育った神経には、文華堂などという、最低のからくりで経営する店や、町人ぐらしで触れるものごとの一つ一つに、やりきれないほど