Japanische Klassiker mit Furigana
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わがまま
わがまま
伊藤 野枝
Lesen Sie わがまま von 伊藤 野枝 (いとうのえ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.570 Zeichen · 18 Bildschirme
行きづまる所まで――」
何故かしらこみ上げてくる涙をグッと呑み込んで、勢いよく彼女はたち上がった。汽車は見覚えのある松原を走っている。松の上からは日蓮の首がニュッと出ている。
「来た――博多だ――遂に、遂に――」
地響をさせて入ってきた汽車はプラットホームにそって長々と着いた。ピタリと汽車の動揺が止むと、激しい混乱が登志子の頭を瞬間に通りすぎた。
まき子が大さわぎして降りる後から登志子は静かに下車した。降りると少し離れた向側の人と人との間にチラと覚えのある叔父の外套の袖が見えて、やがて此方へ急いで来る。続いて来る若い男の顔を見ると登志子は我知らずブルブルっと震えた。
「あの男が来ている、あの男が――ああいやだ! いやだ!」
彼女はクルリと後を向いて、左のあらぬ方を向いた。そこにはまたいま自分達の乗ってきた汽車の窓に向って大勢の女学生に囲まれた背の高い男の姿を見出した。登志子は瞳を凝らしてその後姿を見つめていた。
「登志さん」
はずんだ従姉の声に我に返って手持無沙汰に立っている――永田――夫――に目礼して嫌な叔父に挨拶をすました。傲然とかまえた叔父の顔を見、傍におとなし気な永田を見出すと、彼女は口惜しさに胸がいっぱいになるのだった。