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Japanische Klassiker mit Furigana

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アンドロギュノスのちすじ

アンドロギュノスの裔

渡辺 温

Lesen Sie アンドロギュノスの裔 (アンドロギュノスのちすじ) von 渡辺 温 (わたなべおん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.168 Zeichen · 267 Bildschirme

Aozora Bunko

僕は直ぐに事態の容易ならぬのを察して、幸子の悲鳴のした方へ飛んで行った。すると果して、幸子は高い断崖の途中に危くぶら下っているのではないか。僕は大声で助けを呼ぼうとしたが止した。そして急いで松林を出ると、とっつきの百姓家の納屋に忍び込んで、有り合せた井戸綱を一束抱えてとって返した。僕はその綱を手近の木の根に縛りつけて、それに縋りながら、幸子のところ迄首尾よく降りることが出来たが、さて気絶した幸子の顔を見ると俄かに気が変った。――わざわざこんな不貞な妻を助けるなんて、何と云う愚なことだろう。女を殺してその姦夫を殺人罪に陥れてしまえば、それでいいではないか。旻自身が既に彼女を殺したつもりなのだからこれ程容易な話はない。ここで、彼女の生命を助けたりすることはむしろ神様の思召を無にするにも等しい。僕はそう覚悟をきめると力任せに、彼女の体を蹴とばした。彼女はパジャマの片袖を松の枝に残したまま、真逆様に白い波の砕け散っている岩の上に落ちて行った。僕はそのパジャマの袖を取って、それを崖の上に置いて、如何にもそこで幸子とお前との間に格闘でも行われたように見せかけて、その筋の発見を早めようかと思ったがなまじそんな細工をして、お前自身に第三者の介在を気付かれては却って困ると考えて、止めた。