Japanische Klassiker mit Furigana
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アンドロギュノスのちすじ
アンドロギュノスの裔
渡辺 温
Lesen Sie アンドロギュノスの裔 (アンドロギュノスのちすじ) von 渡辺 温 (わたなべおん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.168 Zeichen · 267 Bildschirme
――帰れ! やい、けえれねえのか、てめえ宿なしじゃあるめえな!」
先ずだみた男の声でそう怒鳴るのが井深君の耳に入った。井深君も人々の後から内部の出来事をうかがった。井深君は人並より丈が高かったので、溝板か何かを足場にして少し背延びをするとすっかり見ることが出来た。井深君は入口に近い卓子の一つに顔を伏せている小ざっぱりした空色の水兵服を着て赤い飾り玉のついた仏蘭西様の水兵帽をかぶった十七八の少女と、その傍に立って二人の女給らしい、ひどくまるまると肥って赤ら顔の女と、それとまるであべこべに痩せこけて蒼い女と、それに主人とも見える背広服を着て頭の頂をてかてかに禿げ上らせた男とを見た。
――あんた、泣いたって、泣き真似なんかいくらしたって、誰あれも可哀相だなんて思やしなくってよ。早くお帰んなさいよ。」と肥った女が云った。
なる程、安物の置電燈のうす紫の笠の下で、水兵帽子の赤い玉のかすかに揺れているのがわかった。
――交番へそう云うじゃなし、帰ってもいいなんて、有難いと思わないのかね。いけ洒々と泣いて見せたりしやがったって、そんな手なんかに乗って堪るかってんだ、ほんとうに。