Japanische Klassiker mit Furigana
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アンドロギュノスのちすじ
アンドロギュノスの裔
渡辺 温
Lesen Sie アンドロギュノスの裔 (アンドロギュノスのちすじ) von 渡辺 温 (わたなべおん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.168 Zeichen · 267 Bildschirme
ところでさて、井深君はその水兵服の少女を連れて其処を出なければならなかった。中山帽をかぶってステッキをついた紳士と空色の水兵服を着た少女とは、やがて赤坂見附の方へ、うす暗い歩道を歩いて行った。月は今は真上から静かにさしかけていた。
――君、どうして、あんなところへ入ってご飯を食べなければならなかったの?」と二人っきりになると、そんな少女に対しても井深君は固くなって口をきいた。
――あたし、でも、おなかが空いたんですもの。虎の門の裏でお友達とテニスをしたのよ……」と甘えるような声で少女は答えた。何てしゃあしゃあしていることだろう――と井深君は思った。しかし、まあなんてその声までが、そっくり自分の恋人そのままであることよ――と感嘆した。そして、もしも、あのようなところで遇ったのではなくして、はじめから、恋人と二人で此処を散歩していたものとしたならば、(――何と云う幸福な仮想であろう!)自分は決してこの少女が、自分の恋人と別人かも知れないなぞと云う疑をさえ差し挾まなかったのだが……それにしても、なぜこんなにまでよく似た人間が二人もいるものであろう、恐しい事だ――