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Japanische Klassiker mit Furigana

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アンドロギュノスのちすじ

アンドロギュノスの裔

渡辺 温

Lesen Sie アンドロギュノスの裔 (アンドロギュノスのちすじ) von 渡辺 温 (わたなべおん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.168 Zeichen · 267 Bildschirme

Aozora Bunko

「あたし、やっぱりお返しするわ、このピン……」

「うん、それがいい。それがいい。そして、やはりお金を持っておいで――」

井深君は、ほっとした気持で、直ぐ外套と上衣の釦を外してふところに手を差し入れた。すると娘はあわただしくそれを押え止めて、

「嫌よ、嫌よ。お金なんか!……あたし、つまんないわ。」と殆ど泣きそうな声でそう云うのである。

「だって、それでは可笑しいじゃないか――」

「いいの。その代り、お願いがあるのよ。このピンを、もう一っぺん私の手であなたにささせて下さらないこと?……おいや?」

「ちっとも嫌なことはないが、しかし……」

「有難う!」

娘はちょっと背延びをし乍ら、井深君の首に片腕を巻きつけて、そしてそのタイピンをさした。それからそれが済むと、両手で井深君の耳をひっぱって、井深君に雪だらけの目と鼻と口とで接吻するが早いか、「サヨナラ!」と叫んで、威勢よく雪の中を駆け出して消えてしまったのである……

*    *    *

「……僕は、それで呆然としてしばらく其場に佇んでいた。……」と井深君は鳥渡言葉を切って、軽い溜息を一つ吐いた。

「なんだ。それでお終いかい? いやはや! 僕たちは何も君のローマンスを聞く筈ではなかったのだが――」