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Japanische Klassiker mit Furigana

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アンドロギュノスのちすじ

アンドロギュノスの裔

渡辺 温

Lesen Sie アンドロギュノスの裔 (アンドロギュノスのちすじ) von 渡辺 温 (わたなべおん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.168 Zeichen · 267 Bildschirme

Aozora Bunko

そして窓外のザアザアと云うはげしい――と云っても決してそれは不愉快でない程度におけるはげしさの雨の音をじっと聞き乍ら、久方振りで眺められる懐しい東京の風景……家こそもう失くなっていたが僕の生まれた土地である美しい浜町河岸の夕まぐれや……こんな雨の晩にはさだめし絵の様に綺麗に見えたであろう、人形町通りや……または白い水鳥がいくつも飛んでいる霧のかかった大川の眺めや……それから或は幼ななじみのいろんな年寄りや友達や……それらのさまざまな楽しい想い出に浸って、可成り上機嫌になっていたのですが、その楽しい瞑想をしばしば不意に破る者がありました。それは僕の室から程近い玄関口の方に当って時折、するどく、けれども何となく物悲しい余韻をひびかせて、犬が吠え立てるのであって、僕はあまり雨降りの夜に犬の吠声を聞いた事がなかったもので(むろんそれは人通りの少い故にもよるのだろうが)――ちょっと訝しく思ったのでした。殊にその夜の雨足は今も云った様にかなりはげしかったのですからね。けれどもまたそれだけに一層、碌に泊客もないらしいこの宿屋の一室には物寂しい、しみじみとした静閑さがみちていました……と、僕はふと耳を澄ましました。