Japanische Klassiker mit Furigana
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アンドロギュノスのちすじ
アンドロギュノスの裔
渡辺 温
Lesen Sie アンドロギュノスの裔 (アンドロギュノスのちすじ) von 渡辺 温 (わたなべおん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.168 Zeichen · 267 Bildschirme
あわれな郁少年! 道理で、あれ程どんな事があろうとも船までは見送りに来ると云っていた彼の姿は見えずにしまったのだ……(清水の眼には泪がいっぱいに溢れていた)
長崎に上陸するとすぐ僕は、例の象牙の牌を三千円で、ずいぶん廉いとは思ったが、売り払ってしまいました――郁少年の無慙な死に弥が上にも憂欝になっていた僕は、殆ど毎日終日船室の中に引きこもっていたのですが、その間に僕は幾度となく密かにその牌を取り出しては眺め入りました。すると、どうしたわけあいか、不思議なことにも、段々とその不気味な白と赤との対照がたまらなく不愉快に、ついには見る毎に鮫肌たつ程いやらしいものに感じられて来たのです――三千円じゃァたしかに廉すぎましたよ。本当の値うちの十分の一にも当らないでしょう。併し、僕はその外にも、約その二十倍位の現金を――麻雀で儲けた金を持っていたので、とにかくあっ晴れ一っぱしの海外成功者の様な気になって、一年振りかで再び懐しい東京へ戻って来たのでした……』
と、ながながと物語って来た清水は、ここでしばらく語を切るとさて、ひとつ重い溜息をもらしたのである。
『それで、君はそこでもその郁と云う支那人がつまり、君からサムライの衣裳を貰ったばっかりに君の身代りに立ったと云うのですね。