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Japanische Klassiker mit Furigana

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アンドロギュノスのちすじ

アンドロギュノスの裔

渡辺 温

Lesen Sie アンドロギュノスの裔 (アンドロギュノスのちすじ) von 渡辺 温 (わたなべおん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.168 Zeichen · 267 Bildschirme

Aozora Bunko

それで良人は家へ帰らない日が多くなった。しまいには一週間にたった一度も帰らないことがあった。そして家計にも困るようになった。

彼女は子供の時からずっとそうして来たように二階の窓の近くに床をのべさして寝ていた。けれどもそこの窓から見えるものは西洋館の屋根の三本煙突ではなかった。碧い色の海と月見ヶ丘のきりぎしとであった。月見ヶ丘には恰度月見草がさかりであった。たそがれが迫る頃、彼女は窓敷居に凭掛って首をさしのべて淡黄色い花でいっぱいになった丘の方を眺めた。彼女の顔の両側には最早や大きなリボンを結んだ振分髪は垂れていなかった。長い病気のために、ざらざらに脱けて少なくなった毛が、夕風に悲しげにそよいでいた。

(――可哀相な、可哀相なあたし!……)

彼女は十六の彼女と少しも変らない泪を滾して子供のように泣いた。彼女の感動し易い性質は年と共に決して薄れて行きはしなかった。……併し、到頭その無限の泉のようにさえ思えた彼女の泪も涸れる時が来た。

或る日、一人の老婆が彼女を訪れた。町で芸者をしていた、老婆にはたった一人の娘が彼女の良人と一緒にそこの港から姿を消してしまったと云うのである。