Japanische Klassiker mit Furigana
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アンドロギュノスのちすじ
アンドロギュノスの裔
渡辺 温
Lesen Sie アンドロギュノスの裔 (アンドロギュノスのちすじ) von 渡辺 温 (わたなべおん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.168 Zeichen · 267 Bildschirme
……私は、姉の体を食べても大きくなる事が必要だったのだ。して見れば今になって、唖娘の気紛れな感傷のために、大人になることを妨げられなければならない理由は何処にもない筈だ。……人生の曙に立って、私に価値あるものは、哀れな片輪者の泪ではなくして、立派な髭と、そしてあの美しい娘の恋だけである! と。
――自分は先ず自由な一本立ちの生活をしなくてはならない、と私は思い立った。
併し、その前に私は、姉の正体を、姉が一体果して、尋常な路傍の草花売りであるか否かをたしかめたかった。この頃になって気がついた事だが、姉の草花を入れる小さな籠に一輪の花はおろか枯れ葉や花の匂も、ただの一度だって、そこに花なぞの入っていたらしい形跡をみとめ得たためしはなかった。それにそんな籠一杯の花の数が、私達二人の生活を支えるのには、あまりに少なすぎることをも理解するようになったし、私は姉の商売をしているところを見届ける必要があると切実に感じた。
暮方近くになって、姉が眼をさました時に私は姉にたずねた。
――姉さんは、何処で商売するのですか?」
姉は、明かにギクリとしたらしかったが、つとめて平静を装って、窓から遙かの夕焼雲の下にそびえ重さなる街をゆびさした。