Japanische Klassiker mit Furigana
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アンドロギュノスのちすじ
アンドロギュノスの裔
渡辺 温
Lesen Sie アンドロギュノスの裔 (アンドロギュノスのちすじ) von 渡辺 温 (わたなべおん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.168 Zeichen · 267 Bildschirme
併し、彼女はあんまり長いこと、知らない若い男を瞶めているのは非常に不躾だと気がついたので、いそいで食事を済ませて卓子から離れた。晩に家へ帰ってから母親にその話をした。
『綺麗な男の人はみんなお父さんに似ているかも知れないね。』と、母親は娘の大袈裟な話ぶりを聞いて、笑い笑い云った。『さもなければ、お前が心の中でその人を好きになったんだよ。好きな人なら、どんな風にだって良く見えるから。……けれどもお父さんは若い娘を狙うような真似なんかしなかった。』
『あら、同じ食べものを誂えたからって、まさか狙ったとも云えなくってよ。お母さんと来たら、随分苦労性ね。大丈夫。あたし、お母さんなんかに些とも心配かけやしないわ。』
娘は何時になくはしゃいだ調子で答えた。
次の日、出勤の折、会社の扉口の前で智子は再び青年と出遇した。青年は、恰度廊下を隔てて筋向いになっている自動車会社の事務所から姿をあらわしたところだったが、彼女と顔を見合わせると、周章てて眼を外らせて、まるで慍ったような硬い表情を浮べながら、玄関の方へ歩み去った。
智子が考えてみるのに、その青年は前から其処の自動車会社に勤めていて、これ迄も幾度かお互に顔を合わせながら、どんな男の社員たちにも殆ど関心をもたなかった彼女だったので、つい見過ごしていたのかも知れなかった。