Japanische Klassiker mit Furigana
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アンドロギュノスのちすじ
アンドロギュノスの裔
渡辺 温
Lesen Sie アンドロギュノスの裔 (アンドロギュノスのちすじ) von 渡辺 温 (わたなべおん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.168 Zeichen · 267 Bildschirme
すると蓄音器係のAの細君が
「どうぞ。――」と冷かにそれに答えた。
結婚して三週間経つか経たない中に、Aは新妻を裏切ってしまった。
或る晩、矢張りタンゴを踊っていたのだが、Aは細君が退屈そうに脇見をしている隙を覗って、素早くパアトナーの唇に接吻した。そして、彼女が帰る時にも、わざわざポオチまで送って出て、そこの藤の緑廊の蔭で長い接吻をしたのである。
だが、その後で彼は直に家の中へ飛び込んで行って、すっかり細君に白状した。彼女も遉にびっくりして泣いた。
「あたし、何だか、そんなことになるのが前から判っていたような気もするの……」と彼女は泣きじゃくりながら云った。
「そう薄々感づいていながら、平気でいたお前にだって責任の一半はある。」Aは我儘な子供のように焦れったがった。
「あなた、なぜ、あたしを捨ててしまおうとなさらないの?」
「僕はお前と別れようなんて夢にも考えてやしないよ。……お前が、お前一人で、僕を堪能させてくれなかったからいけないのだ。結婚したばかりで、妻が夫の心の全部を占領していないなんて間違いだと思う。」
「――別れるの可哀相だから嫌だと云うだけでしょう?」