Japanische Klassiker mit Furigana
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オンチ
オンチ
夢野 久作
Lesen Sie オンチ von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 20.673 Zeichen · 42 Bildschirme
その手を払い除けると、一度投棄てた黒い棒を取上げて身軽く事務員風の男の背後にまわった。こちらに背中を向けて黒い棒を振上げると、手といわず頭といわずメチャメチャに殴り付けて、とうとう地面に平ったくなるまでタタキ付けてしまったらしい。それはさながらに蛇をタタキ殺す時のように執拗な、空恐ろしいような乱打の連続であった。それから立上ってズボンのポケットから白い、折目正しいハンカチを引出して、帽子をすこし阿弥陀にしながら大急ぎで額の汗を拭いた。すべてが声の無いフイルムそのままの光景であった。
「ソレ見ろ。芝居じゃねえか」
「しかし真剣にやりよるのう」
「何だろう……探偵劇かな」
大急ぎで汗を拭いた覆面の菜葉服は、コートの上に投出された鞄を引っ抱えるとキョロキョロとそこいらを見まわした。遥かに三人の姿を認めたらしく、白い軍手を揚げてチョット帽子を冠り直すと、そのまま第三工場の鋳造部附属の木工場の蔭へ走り込んで行った。
コスモスが風に吹かれて眩しく揺れ乱れた。
その時に、あとに残った事務員風の男は、すこしばかり身動きしかけたようであったが、そのままグーッと身体を伸ばした。