Japanische Klassiker mit Furigana
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オンチ
オンチ
夢野 久作
Lesen Sie オンチ von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 20.673 Zeichen · 42 Bildschirme
「ヘヘッ。……初めやがった。どこの工場だろう」
と三好が朗らかな口調で云った。三人は黙って見ていた。
そのうちに事務員風の男が、自分の影法師を踏み踏み、コートの真中あたりまで来たと思うと、その背後から、急に歩度を早めた菜葉服の男が躍りかかって、無帽の男の頭を黒い棒で殴り付けた。事務員風の男は一タマリもなく、黒い鞄を投出してバッタリと俯向けに倒おれた。
「アッ。殺りおったぞ……」
と又野が引返して駆出そうとするのを、三好と戸塚が腰に抱き附いて引止めた。
「……馬鹿……まあ見てろ……」
「……何……何かい……」
行きかけた又野が青くなって振返った。歯の根をガタガタいわせていた。
「……ヒ……人殺しやないか……」
三好が白い歯を剥出して笑い笑い又野の前に立塞がった。
「アハハ……馬鹿だな。よく見てろったら……あれあ芝居だよ。芝居の稽古だよ。第三工場の奴かも知れねえ」
又野が太い溜息を吐いた。そのまま棒立ちになって見ていた。
テニス・コートの上の菜葉服は、黒い棒を投棄てた。それは重たい鉄棒らしかったが、直ぐに事務員風の男の頭の処に走り寄って、顔を覗き込んだ。すると思いがけなく事務員風の男が半身を起して、盲目滅法に掴みかかったので、菜葉服の男は面喰ったらしい。