Japanische Klassiker mit Furigana
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カインのまつえい
カインの末裔 クララの出家
有島 武郎
Lesen Sie カインの末裔 クララの出家 (カインのまつえい) von 有島 武郎 (ありしまたけお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 45.864 Zeichen · 93 Bildschirme
戸外では赤坊がまだ泣きやんでいなかった。
「俺ら銭こ一文も持たねえからちょっぴり借りたいだが」
赤坊の事を思うと、急に小銭がほしくなって、彼れがこういい出すと、帳場は呆れたように彼れの顔を見詰めた、――こいつは馬鹿な面をしているくせに油断のならない横紙破りだと思いながら。そして事務所では金の借貸は一切しないから縁者になる川森からでも借りるがいいし、今夜は何しろ其所に行って泊めてもらえと注意した。仁右衛門はもう向腹を立ててしまっていた。黙りこくって出て行こうとすると、そこに居合わせた男が一緒に行ってやるから待てととめた。そういわれて見ると彼れは自分の小屋が何所にあるのかを知らなかった。
「それじゃ帳場さん何分宜しゅう頼むがに、塩梅よう親方の方にもいうてな。広岡さん、それじゃ行くべえかの。何とまあ孩児の痛ましくさかぶぞい。じゃまあおやすみ」
彼れは器用に小腰をかがめて古い手提鞄と帽子とを取上げた。裾をからげて砲兵の古靴をはいている様子は小作人というよりも雑穀屋の鞘取りだった。
戸を開けて外に出ると事務所のボンボン時計が六時を打った。びゅうびゅうと風は吹き募っていた。