Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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キャラコさん

キャラコさん

久生 十蘭

Lesen Sie キャラコさん von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 14.444 Zeichen · 30 Bildschirme

Aozora Bunko

べつのキャラコさんが、こたえる。

――どういう動機で動いていいかわからないわ。

――動機もくそもあるもんか。ひと足踏み出しさえすれば、あとは自然にうまくゆく。

キャラコさんは、渋々承知する。死んだ気になって、ひと足書机のほうへ踏み出す。案外、わけはない。

一歩、二歩、三歩……。

いわゆる、忍び足というやつで、猫のように、虫のように、そろりそろりと這ってゆく。

ようやく、書机に行きつく。

キャラコさんが、元気のない声で、つぶやく。

「とうとう、やって来た」

書机は、すぐ眼の前に、手を伸ばせば届くところにある。

ところで、それは書机なんてものじゃない。まるで、城のように、絶壁のようにそそり立って、冷然とキャラコさんを見おろしている。抽斗は、みな、キュッと口を結んで触りでしたらただではすまさないぞ、というふうに意地の悪い眼をむいている。

キャラコさんは、ムッとする。敵愾心を起す。

(やろうと思えば、こんなことぐらいわけなくやれてよ)

思い切って手を伸ばす。右の、上から二番目の抽斗に指先が触れる。チカッと、火傷をしたような痛みを覚える。指が抽斗の曳手にかかる……