Japanische Klassiker mit Furigana
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キャラコさん
キャラコさん
久生 十蘭
Lesen Sie キャラコさん von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 14.122 Zeichen · 29 Bildschirme
そんなふうにして、浮筏から三十間ばかりのところまで近づいて来た。
ところで、そこまで来ると、またすこしようすが変わって来た。眠りかけているひとのような、ぼんやりとした表情で、ものぐさくのろのろと水をかいている。時々、まったく腕の運動が休止して、ガブリと水の中へ沈み込むと、またあわてたように忙がしく手足を動かす。が、それも瞬時のことで、すぐ運動が緩慢になり、がぶッと水の中に潜ってしまう。そして、この、がぶッがだんだん頻繁になる。
芳衛さんが、顫えを帯びた低い声で、いった。
「ふざけてるのかしら」
誰も、返事をしない。
みな、吸い取るような眼付きで、ローリーさんの不思議な運動を眺めている。
鮎子さんが、しっかりした声を、だす。
「ローリーさん、溺れかけているんだ」
三人の背筋を、何か冷たいものが、すッと走る。チラチラと互いの顔を見かわす。みんな蒼い顔をしている。三人の眸が、たがいに、どうしよう、どうしよう、といっている。
鮎子さんは、両手で膝をかかえながら、
「……どうしたんだろうな、腓返しでもしたのかなァ」
と、ひとりごとみたいにつぶやいていたが、だしぬけに、ザブンと水の中へ飛び込むと、鮮やかなクロールでローリーさんのほうへ泳いで行く。