Japanische Klassiker mit Furigana
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キャラコさん
キャラコさん
久生 十蘭
Lesen Sie キャラコさん von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 17.819 Zeichen · 36 Bildschirme
ボクさんは、手真似で、しきりになにかやっていますが、あたしには、どうしてもその意味がわかりません。ボクさんは、困ったような顔をして、考え込んでいましたが、なにを思いついたのか、ツイと窓のそばを離れると、ヴァイオリンを持ち出してきて、ゆるい調子の曲を奏き出しました。
きいていると、それは、ベートーヴェンの『月光の曲』の緩徐調の旋律なんです。……ようやくわかりました。ボクさんは、こういっているのです。
「……今晩、月が出たら……」
その午後、あたしは煮られるような思いで、日の暮れるのを待っていました。この五時間ほどの時間が、自分の半生よりも、もっともっと長いような気がしましたわ。
ようやく月が出かかったので、土塀のところへ出かけてゆきました。
月の光の中で、桔梗の花が星のようにゆれています。あたしは、その中に坐って、ボクさんがやって来るのを待っていました。
そのうちに向うの草の中で、小さな足音がきこえ出してきました。あたしは、息苦しくなって、両手でギュッと自分の胸をしめつけました。
寝間着を着たボクさんが、白兎のように穴から飛び込んできました。あたしは、赤ん坊のように両手で受けとめると、しばらくは、気が遠くなるような思いでした。