Japanische Klassiker mit Furigana
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ズラかったしんきち
ズラかった信吉
宮本 百合子
Lesen Sie ズラかった信吉 (ズラかったしんきち) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 54.656 Zeichen · 110 Bildschirme
振向いて見ると、世話好きな女はちゃんとまだこっちを見ていて、
「そこ、そこ!」
指さして、首をふってる。
その様子を見て耳飾りを下げた若い窓口の娘が声をかけた。
「お前さん、なに用?」
モスクワじゃ役所でも店でも、どっちを向いても女が多勢働いている。信吉は、頭を掻いちまった。
娘は、おかしそうに、小脇にパンを抱えたなり云うことが解らないでいる信吉の恰好を見ていたが、
「若しお前さんが組合員になりたいなら、はじめ一ルーブリだけ、出しゃいいんですよ。それから後は、毎月お前さんがいくら稼ぐか、それによって、割合で払うの」
と、ゆっくり、言葉を区切って説明した。
「――俺、今金ないんだ」
「それがどうなのさ! じゃ、またあるときにお出でな」
わかんねえことがまた一つ出来た。組合へ入っていない者だって労働者という点では同じだ。ソヴェトが労働者の国って立て前で、一応手帖で金の威光を封じてるように見せてるが事実金だして買った別の手帖もってれば、食物でも何でも余分に貰える。そうとすりゃ、同じこっちゃねえのかしら? やっぱし、金のある者が金のねえもんより沢山取ることんなるんじゃねえか?――