Japanische Klassiker mit Furigana
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セトナおうじ(かだい)
セトナ皇子(仮題)
Lesen Sie セトナ皇子(仮題) (セトナおうじ(かだい)) von Nakajima Atsushi (中島 敦) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 1.733 Zeichen · 4 Bildschirme
世界開闢説についてばかりではない。日常目にする凡てのことに、この疑いが、からみつく。エチオピアの金糸蛇の長い尾のように、何故在ったか。無くても良かったろうに。何故在るか、無くても良いだろうに。セトナ皇子は今迄の勉強に輪をかけて、古文書や墓碑銘を熱心に漁り出した。それ等の中にこの疑いを解く鍵を見出そうとしたのである。彼の努力は無駄であった。岸壁の洞穴に行いすます高名な魔術師も、年老いてアモン・ラーの心を体したといわれる高僧も、王子の問に答えることが出来ない。王子は次第に笑わなくなった。いつも、夕暮の湖の紅鶴のように、しょんぼりと考えこんでいる。ヒタ族の国から連帰った女曲芸師の演技も最早彼の心を惹かなくなり、浴の後にプント国から到来の妙なる香油を塗ることも止めてしまった。爾来、花と咲誇ったテーベの宮廷は闇となった。セトナ王子の智慧が、愁の雲に遮られて、言葉の光を放たなくなったからである。
以後、王子は何事をもいわず、何事をも行わず、蝋の木偶のようになって一生を終った。死ぬ迄の間に彼のしたことは、たった一つ。それは、頭に火皿をのせ、手に二股の杖をついて、その書物をネフェルカプターの墓所へ返して行ったことである。