Japanische Klassiker mit Furigana
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トシオのみたもの
トシオの見たもの
岡本 かの子
Lesen Sie トシオの見たもの (トシオのみたもの) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.531 Zeichen · 21 Bildschirme
トシオはあわてて、その方を向きました。しかし、黄ばんだ葉も半落ち切らない上に、何百年間か張りはびこった枝が、小さな森くらいに空を劃ってこんもりと影を作り、その処々に、尨大な毬の様な形に、葛の蔓のかたまりが宿って居るので、鳥はそのなかにでも隠れて居るのか、一向に、その姿が、トシオに見えないのでした。が、鳥はなおも、声を張って、その不思議な美妙な響きで、トシオの耳朶をふるわすほど近く鳴くかと思えば、また、かすかに、雲の彼方に消え入って、其処でほのかに忍び啼きして居る様な、それが一層トシオをなつかしがらせる静な優しい調子を帯びるのでした。
さすがにトシオは子供です。この自分をしきりに誘う小鳥の声にそそのかされて、今までの、不平も疑いも、すっかり忘れて、いっさんに大欅の下へ走って行きました。
「鳥はどこか、何の鳥か」
トシオはまた一心に、そこから上を見上げました。しかし不思議なことには、あれほど今まで朗に優しくなつかしく鳴いて居た鳥は、どこへいったものやら、トシオが見上げる大欅の梢の隅々まで尋ねても、かすかな羽ばたきさえ聞かれそうもなく、静まり果ててしまいました。