Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ボロやのしゅんじゅう

ボロ家の春秋

梅崎 春生

Lesen Sie ボロ家の春秋 (ボロやのしゅんじゅう) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.411 Zeichen · 263 Bildschirme

Aozora Bunko

三元はろくに勘定もできないほど下手なのに、摸牌だけはほとんど玄人じみて正確なことを、彼はその時知った。ある時三元とふたりでいるとき、彼はそのことを言うと、三元はすこし厭な顔をした。

「おれの親爺は、眼が見えないんだ」

彼は三元のその言葉を無条件で信じた。なにかもやもやしたものが、どこかでぴたりと合った感じがした。

「めくらの手を引いて歩くときのこつを教えてやろうか。それはね、めくらより一歩自分が先に足を踏み出して行けばいいんだ」

三元の指は細くて長かった。関節がないような印象の指であった。ふしぎに白木の指がそれと同じ感じであった。白木の指は長くはなかったが、細くて、くねくねと力点がないような動きをした。

翌日から彼は三度三度蜆汁をのんだ。

白木が持ってくる笊の蜆は、台所の流しの上で、一日中チイチイと鳴いていた。便所の行き戻りにそれを聞くと、彼は身体の中に、しずかな音楽のようなものが流れるのを感じた。蜆は毎朝白木の小娘が持って来た。小娘は縁側まで来ると、大きな声で彼を呼んだ。

「蜆ですよう」

縁側においとけばいいのに、と彼が寝床の中で思って、返事しないでいると、小娘は更に声を張り上げて叫んだ。