Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ボロやのしゅんじゅう

ボロ家の春秋

梅崎 春生

Lesen Sie ボロ家の春秋 (ボロやのしゅんじゅう) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.411 Zeichen · 263 Bildschirme

Aozora Bunko

その時彼は部屋を閉め切って、白木と花札をやっていた。コイコイという遊びであった。白木はそれをコヨコヨと発音した。白木は彼の取り札と自分の取り札を見くらべながら、まだ大丈夫と見ると、勝ちを大きくするために、コヨコヨと言いながら勝負をせり上げた。

「コヨコヨ」

「コヨコヨ」

白木の黒い小さな眼球は、そんな時ふと残忍な光を帯びてうごいた。彼は反射的に札を出したり取ったりしながら、気持はそばで鳴っているラジオに牽きつけられていた。ラジオからは、東京裁判の実況放送が流れていた。英語と日本語が入りみだれて聞えていた。その中から、ひときわ荘重なはっきりした言葉を、彼の耳は拾いあげていた。その言葉は、ある重量と実質をふくんで、彼の耳におちた。

「デス・バイ・ハンギング」

「デス・バイ・ハンギング」

ぶらりとぶら下った人間の姿が眼の前に見えるようじゃないか、と彼は心の中でつぶやいた。しかしその言葉の重さは、それだけでなかった。なにか言いようのない拡がりを、その言葉は持っていた。肉声を殺した機械音であったから、なおのことその感じは強かった。それは沢山の人を殺し、彼自身の内部のものを殺した兇暴な嵐の、ひとつの帰結点の位置で発音されていた。