Japanische Klassiker mit Furigana
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ボロやのしゅんじゅう
ボロ家の春秋
梅崎 春生
Lesen Sie ボロ家の春秋 (ボロやのしゅんじゅう) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.411 Zeichen · 263 Bildschirme
彼の跫音を聞いても、おかみさんは上目使いでちらりと彼を見ただけで、やはり手の動きを止めなかった。朽ちた竹は湿った音を立てて折れ、おかみさんの手に束ねられた。
(あんな商売では、家賃をはらう余裕も出ないのかしら?)
犬がくわえて行った靴のことは、彼はもう諦めていた。発田がそれを穿いていることを、彼はある日見たのだから。
発田という男と隣人になって、一年近く経っていたが、彼は発田とほとんど口を利いたことがなかった。発田は顔色のわるい、むくんだような感じの男であった。この男は胃弱にちがいないと、彼は常々思っていた。青ぐろい顔に、銃眼みたいな小さな眼がついている。発田は、朝早く出てゆくと、夜になって帰ってきた。その姿を彼は時々見ることがあった。
発田は身体に合わない日にやけた背広を着ていた。弁当箱を小脇にかかえて、朝早くと夜更けて、彼の家の前を通った。特徴のある跫音がその時刻にひびいた。彼は発田がネクタイをしめて帰るのを見たことがなかった。襯衣の上にゆきの短い上衣を着ていた。そして足には靴を穿いているときもあったし、下駄を穿いていることもあった。服装にさほど気を使う必要のない職業に従事していることは、それで判った。