Japanische Klassiker mit Furigana
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ボロやのしゅんじゅう
ボロ家の春秋
梅崎 春生
Lesen Sie ボロ家の春秋 (ボロやのしゅんじゅう) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.411 Zeichen · 263 Bildschirme
卵の袋を脇の下にはさみ、彼は手を伸ばしてそれを抜きとった。そしてぱらぱらと頁をめくって見た。中山の署名のある記事が、ふと彼の眼にとまった。彼は立ったまま、その記事をばらばら拾い読みをした。
それはM精神病院の訪問記であった。中山はそれをルポルタージュみたいな形式で報告していた。読んでゆく中に、彼は変な食いちがいをその中に感じた。なにかもどかしい感じがそこにあった。ところどころはさまれた彼の感慨が、その気持を引きおこすのであった。
(おれがあそこで感じたことを、中山は全然感じていないようだし)その記事を読みつづけながら彼はそう思った。(中山がここに書いているようなことを、おれは見もしなかったし、感じもしなかった)
中山の記事が力点をおいているのは、病室で見た患者たちの生態であった。彼の記憶のなかでは、それらの光景はもはやぼんやりした灰色の連続として残っているに過ぎなかった。それを中山は丹念に拾いあげて、描写していた。そしてそれに加えた説明は、医師の説明をそっくり流用していた。
「……如何なる事態にたいしても感情を発露させることのない感情荒廃の状態である。