Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ボロやのしゅんじゅう

ボロ家の春秋

梅崎 春生

Lesen Sie ボロ家の春秋 (ボロやのしゅんじゅう) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.411 Zeichen · 263 Bildschirme

Aozora Bunko

経験でそう彼は思っている。その点一番いいのは、靴磨きだ。戦後の一時期、彼は食うに困って、靴磨きをやったことがある。占領兵相手の売り屋をやったが、これは言葉のやりとりがうまく行かなくて、失敗した。靴磨きはよかった。場所を確保するのに一苦労はしたが、定着してしまえば、あとは簡単だ。客が来て、靴台に足を乗せる。それを磨く。磨き終ったしるしに、厚布でチョンチョンと靴先の色をととのえる。客も承知して、靴を引っ込め、金を渡す。受取ってゼニ箱に投入する。ただそれだけだ。客も黙っているし、こちらも口をきかない。主客とも口をきかないで成立する商売は、おそらく靴磨きだけじゃあるまいか。――彼が面白くない気分になっていたのは、だからそのせいではなかった。

「この自動扉なんだな」

窓外に動く街筋を眺めながら、彼はぼんやりと矢木に話しかけた。

「おれはどうもこの自動扉というやつが、好きでないんだ」

「何故です?」

「自分が乗ったんだろ。だから自分の手でしめるのがあたりまえじゃないか。他の力でしめられると、何だか変だ。うっとうしくて、かなわない」

「そうですかね。僕は便利だと思うけれども――」