Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ボロやのしゅんじゅう

ボロ家の春秋

梅崎 春生

Lesen Sie ボロ家の春秋 (ボロやのしゅんじゅう) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.411 Zeichen · 263 Bildschirme

Aozora Bunko

終点に着いたら潮を引くように人々はぞろぞろ降りて行った。おっさんのことなど皆忘れ果てた顔付で、我先に車を出て行った。俺は最後まで残っていた。そして俺はおっさんが残したあのリュックを、うんとこさと背中にかつぎあげたのだ。おそろしく持ち重りのするリュックだった。俺はそれをかついで山手線に乗り換え、そして家にたどりついた。帰り着くまでに何度このリュックを捨てようと思ったか知れやしない。それほどずしりと重かった。俺は腰を曲げて歩きながら次第に気持が沈鬱になって行った。

家に着くと女房が出て来た。俺の女房というのは至極無感動な女で、何事にも驚いたためしがないのだ。俺がかついで来たリュックを開いて、あら、ひじみだよ。と落着いた声で言った。

――しじみだよ、と俺は怒鳴った。なるほど蜆なら重い筈だと思いながら。

女房は両掌でザクザク蜆をすくいながら、俺の怒鳴ったのも気にも止めないふうで、

――ひおしがりして来たの。

と聞いたのだ。俺は上り框に寝ころんだまま、しおひがりだよ、早く床取ってくれ、と怒鳴り返した。身体が綿のように疲れてるくせに、気持は非常にささくれ立っていた。