Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ボロやのしゅんじゅう

ボロ家の春秋

梅崎 春生

Lesen Sie ボロ家の春秋 (ボロやのしゅんじゅう) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.411 Zeichen · 263 Bildschirme

Aozora Bunko

僕は疲れてぼんやり電車に揺られていました。ところが終点近くになって、ふと僕の興味を非常にひきつける現象が、その不破の身辺に起ったのです。

不破の隣りに若い男が同じく立っていました。眼鏡などをかけ、一見サラリーマン風に見える。そいつが夕刊をひろげて読んでいるのです。いや、実際読んでいるのか、ただ拡げてるだけなのか、それはよく判らないのですけれども、その夕刊のかげからその男の手がじわじわ伸びて、時々不破の上衣のポケットをそっと押えてみるらしい。車体の動揺のためかと思ったのですが、それにしては指の動きが不自然だ。スリかな、と思ったけれど、僕は黙っていました。電車はごうごうと走って行く。僕は眼を薄眼にして居眠りをよそおいながら、その手の動きに注意していました。指が女みたいにしなやかに動いて、ポケットの表面を小当りするのですが、なかなか本儀には及ばない。僕は少しずつ胸がどきどきして来ました。こういうことは他人事ながらスリルがあるものですな。それはちょいと魚釣りの気分に似ていました。もう掛かるか、もう掛かるかと、ワクワクしながら観察していますと、その手がとたんにグニャリと平たくなって、するするとポケットに忍び込んだ。