Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ボロやのしゅんじゅう

ボロ家の春秋

梅崎 春生

Lesen Sie ボロ家の春秋 (ボロやのしゅんじゅう) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.411 Zeichen · 263 Bildschirme

Aozora Bunko

大づかみに僕はそう了承しています。オセッカイこそ人間が生きていることの保証であるという具合にです。それにもう一つ、その時嫉妬の気分も多少は僕にあったらしい。もちろんスリ手の若い男に対してです。あいつだけに旨い汁を吸わしてなるものか。一体目撃者の俺をどうして呉れるんだ、というようなあんばいに。

不破はきょとんとした表情で僕を見ました。そこで僕は腰を浮かして、不破の耳に顔を近づけた。不破の耳たぶは大きかったですな。所謂福耳というやつで、こんな耳の持ち主に悪人はめったにいないと言われています。その大きな耳たぶに、僕が今目撃したあらましを口早に吹き込みました。すると不破の顔がさっと紅潮して、出口の方をにらみつけるようにした。電車は新宿終点に停止しかかっていたのです。

たちまち不破は人混みをかきわけて、出口へ突進しました。つづいて僕も。そして停留場から二十米ぐらいの地点で、その若い男の肩をがっしとつかまえたのです。僕らが追っかける跫音を聞いても、若者は逃げ出そうとはしなかったですな。よほどしたたかな奴だったに違いありません。そいつは肩を掴まれたとたんに、かねて予期した如くひょいと振り返り、財布を両手に捧げ持って、ぱっと最敬礼をいたしました。