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Japanische Klassiker mit Furigana

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ボロやのしゅんじゅう

ボロ家の春秋

梅崎 春生

Lesen Sie ボロ家の春秋 (ボロやのしゅんじゅう) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.411 Zeichen · 263 Bildschirme

Aozora Bunko

いつまで経ってもばらばらで、にがりを入れ忘れた豆腐みたいに、いっこうに固まる気配はないようです。結局それがお互いに気楽なのでしょう。そのくせ、近隣の動静に、全然無関心というわけではありません。表面では何気ない表情でも、かげでは妙に気を廻したり、こまかく神経を働かせていたりするのです。たとえば、どの家では今日牛肉の上等を百目買ったとか、どこの家では昨晩夫婦喧嘩をやったとか、まあそんなことです。つまりこの部落の人々は、ことに女たちは、そのような毒にも薬にもならない噂話が、大好きなのでした。

そんな噂話のひとつに、猿沢佐介のことがあります。猿沢佐介という男は、戦争前、ある小さなサーカス団長をやっていた。そういう噂なのです。噂というよりは、今ではもう、伝説といった方がいいかも知れません。当人もそれを否定しませんし、それらしく振舞っている傾向さえあります。団長らしい派手なジャケツを着て、鞭のようなものを持ち、畠の中を悠々と散歩したりするのです。部落の共同井戸端から、洗濯中の女たちがその姿を眺めて、

「ほんとに団長そっくりね」

「まったくね。あのだんだら模様のジャケツの色なんかもね」